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MGMミュージカル(その3)/『バンド・ワゴン』 [雑感]

  映画『ザッツ・エンタテインメント』のタイトルにもなった楽曲「ザッツ・エンタテインメント」は、元々は映画『バンド・ワゴン』のために書き下ろされた挿入歌であった。舞台とそこで生きる人々を称える、「ショーほど素敵な商売はない」と双璧をなすショー・ビジネス賛歌の佳曲である。

  『バンド・ワゴン』は、新作ミュージカルのブロードウェイでの上演を目論む連中が、数々の困難を乗り越えて初日に漕ぎ着けるまでを描いたバックステージ物のミュージカルである。実に楽しくてスマートで、私の大好きな映画の1本なのだが、職業舞台人の端くれとなった今となっては、特別な感慨抜きでこの映画を鑑賞する事は難しい。
  映画の中で描かれている舞台製作中のトラブルや軋轢は、コミカルに誇張されてはいるが、現実の舞台作りそのものである。それもその筈で、脚本のカムデン&グリーンをはじめ、監督のヴィンセント・ミネリも、振付のマイケル・キッドも、主演のフレッド・アステアも、本を正せば皆ブロードウェイの舞台人であった。

  『バンド・ワゴン』は『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』ほどの派手さは無いが、紛れもなく50年代のMGMを代表する傑作であると思う。
  以前、『ジキル&ハイド』の脚本・作詞を手掛けたレスリー・ブリッカスさんと話す機会があったのだが、「何故ミュージカルを志したのか」と尋ねると「子供の頃ロンドンでMGMミュージカルを観まくっていたからだ」と答えた。そして「好きなミュージカルは?」との問いには迷わず『バンド・ワゴン』を挙げた。
  『バンド・ワゴン』の監督ヴィンセント・ミネリとMGMが生んだミュージカルの伝説的大スター、ジュディ・ガーランドの間にできた娘がライザ・ミネリで、ブリッカスさんによると、ライザが最も好きな父親の監督作品が 『バンド・ワゴン』なのだそうだ。今回発売されたDVD『バンド・ワゴン』の副音声では、そのライザが数々の想い出話を披露している。

  ワーナー・ホームビデオは、いにしえのハリウッド・ミュージカルのDVD化にもっとも熱心なメーカーである。これまでにも『オズの魔法使』をはじめ、『雨に唄えば』『略奪された七人の花嫁』『若草の頃』『巨星ジーグフェルド』『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ』『キス・ミー・ケイト』『絹の靴下』『上流社会』などのスペシャル・エディションを発売し、その度に私に随喜の涙を流させて来た。
  今回発売分の中では『バンド・ワゴン』の特典が充実しているが、『イースター・パレード』の副音声コメントも、微に入り細にわたり実に聞き応えがある。

  ところで、ミュージカル映画愛好者が顔を合わすと、次の様な会話が交わされるのが常である。

  「あなたはアステア派か、それともケリー派か?」

  アステアフレッド・アステアで、ケリージーン・ケリーのことであるが、共にアメリカのショー・ビジネス史に一時代を築いた大ミュージカル・スターであり、共にダンスの名手でもある。
  ただ、そのダンスのスタイルがあまりにも異なっているので、それで上の様な会話が交わされることになるのだが、さて、あなたはアステア派?  それともケリー派?


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コメント 9

西本由香

そこまで詳しいわけではないものの、ジーン・ケリーに一票。
お邪魔しました。
by 西本由香 (2005-07-31 20:02) 

山田和也

この際、このページを読んでしまった人は全員、
【どっち派かコメントを残す】
って言う事で、どうですか?
by 山田和也 (2005-08-02 22:47) 

西本由香

↓こんな感じでしょうか?
【ケリー派】
踊ることが楽しくてしょうがない、といった感じのジーン・ケリーのダンスが好きです。『雨に唄えば』は自分がハマッた数少ないミュージカル映画の内の一つです、ベタな作品で申し訳ありませんが。(若干いかがなものかと思ってしまうシーンがほんのちょっとだけありますけど)
『ザッツ・エンタテインメント』は面白かったものの、「大スクリーンで観てこそという部分が大きい作品だよなぁ」と思い、是非映画館で観てみたいなあと思いました。ビデオで観た際は大スクリーンへと脳内変換して観てました。
あとやっぱりジーン・ケリーはかっこよかったです。
by 西本由香 (2005-08-03 01:11) 

梅玉

いつも楽しく拝読させていただいています。
日芸演劇学科劇作コースのミュージカル好きな男です。
僕も、西本さん同様
【ケリー派】
です。
『サマー・ストック』で、ジュディー・ガーランドとトップハットでタップを踏んだり、
『ブリガドーン』でロマンチックなダンスを魅せるケリーも格好良いですが、
『踊る大紐育』のオープニングで無邪気にニューヨーク中を跳ね回ったり、
『巴里のアメリカ人』で子供たちと♪アイガットリズムを歌ったり、
『私を野球に連れてって』でシナトラと二人でボードビル風のダンスを踊ったり、
『錨を上げて』で『トムとジェリー』のジェリーと踊ったりする、
お茶目なケリーが大好きです。
以上の作品を中学時代に見たので、ケリーは僕にとって実の兄のように親密な存在です。(それは言い過ぎか・・・)
もちろん燕尾服とトップハットを着せたらアステアの右に出るものはおらず、アステアも大好きですが、親しみやすさでいうとケリーかと。
余談ですが、『ザッツ・ダンシング』(1984)でおじいさんになっているケリーが、頑張って80年代当時の若者の帽子をかぶり、「これぞダンシング!」なんて決め言葉を言っているのを見て、心の中で声援を送ってしまいました。
ケリーは歳をとっても精力的に監督・振付をやったりプロデューサーとして頑張っていたところも魅力的です。
長々と、失礼しました。
by 梅玉 (2005-08-04 03:07) 

山田和也

西本さん、梅玉さん、コメントありがとうございました。
意外にも「ケリー派」が先行しましたねえ!
私の意見は『MGMミュージカル(その4/最終回)』の中で披露するつもりです。
by 山田和也 (2005-08-04 08:48) 

NO NAME

こんにちは。
山田さんに直接メールを送ることなど出来ないのでしょうか?
by NO NAME (2005-08-11 14:13) 

山田和也

ここで私のアドレスを公開する事はできませんので、お手紙などを東宝演劇部宛にいただく、と言う方法では如何でしょうか。

ちなみに住所は・・・

〒100-8415
東京都千代田区有楽町1-2-2
東宝日比谷ビル11階
東宝株式会社演劇部
山田和也行き

です。これで私宛の郵便物は届きますので。
(但し、私の手元に来るまでにはタイムラグがあります)
by 山田和也 (2005-08-12 00:15) 

NO NAME

ありがとうございます。
お手紙送りますね!
これからも頑張ってください。
応援しています。
by NO NAME (2005-08-12 03:28) 

Denliax

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by Denliax (2018-04-08 09:59) 

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